〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第10章 意外な弱点
「あぁ、グリシャの事だな。
それならば問題はない。
あいつも大体はカルラの店に通ってるからな。
おそらく今日も来ているだろう」
それきり特に二人は会話もなく目的の店へと向かった。
カルラが働いてる店─以前はジルの母が働いていた店に着いた二人は店の中に入っていく。
「いらっしゃい─ってなんだキースさんかい」
「客に向かってなんだとはなんだ。
今日は俺ってよりこいつをカルラに会わせたくてな…」
ほら挨拶をと言わんばかりにカルラの前にジルを押し出すキース。
「ん?今日はやけに可愛い女の子を連れてるじゃないですか。
キースさんの恋人かい?それにしちゃだいぶ歳が離れてるねぇ」
「カルラそんな訳ないだろう…
そうじゃなくてよく見てみろ」
キースはカルラの言葉に溜息をつき、カルラにジルの顔をよく見てみろと言った。
「んー?」
キースに言われたカルラはまじまじとジルの覗き込むように顔を見てくる。
ジルは自分が名乗り出た方が早いと思い、おずおずと言葉を口にする。
「あ、あの、カルラさん、私ジルです。
アマリアの娘の…」
ジルから出たアマリアという名前とジルの名前にカルラは大きなつり目がちな目を更に開いて驚いた表情をした。
「ジルちゃんかい!?
心配したんだよ!
何故あの時何も言わずに開拓地になんて行ってしまったのさ!
頼ってくれればジルちゃんなら私の家に来てくれても構わなかったんだよ!」
「えっと、それは…」
ジルは返答に詰まる。
シガンシナ区にジルの親族は祖父以外いなかった。
その祖父も母と一緒に亡くなってしまったのだから、ジルが頼れる人はいなかった。
それにどのみち訓練兵団に入るのだから、と一年くらい開拓地に行ってても何とも思わなかったのだ。
当時、シガンシナ区であのまま生活するなんて事は無いと、それも親族ではない人に頼るなんて事も思いつかなかったのだ。