〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第10章 意外な弱点
エルヴィンを見ずに廊下の先を見つめ、真っ直ぐと歩くジルにすれ違いざまにエルヴィンが声を掛けた。
「ジル」
エルヴィンに声をかけられると思ってなかったジルは肩を揺らし、視線をエルヴィンに合わせた。
「ど、どうしたの?私になにか用?」
このジルの質問に答えることなく、エルヴィンは己が聞きたいことを聞く。
「分隊長の部屋から出てきたが何かあったのか」
「特に何かあったわけじゃないけど…
用はそれだけ?
他に何も無いなら私行くね」
ジルはそう言うと、エルヴィンの横をすり抜けようと思ったが、再びエルヴィンがジルを引き止めた。
「ジル、今日の夜空いてるか?外に食事でもどうだ?」
エルヴィンからこんな誘いがある事に驚くジルだが、今日はキースと約束をしたばかりだし、約束が無かったとしてもエルヴィンと二人で外出するのも気まずいような気がするが…
「ごめんなさい、今日は駐屯兵に行った同期の子達と会う予定があって…」
エルヴィンにはキースと出かける事を知られたくなかったジルは咄嗟に嘘をついてしまった。
別にキースとやましい事がある訳でもないのに。
「そうか、それならまた別の日にでも」
エルヴィンはそれだけ言って、キースに用があるのかキースの部屋へと入っていった。