〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第10章 意外な弱点
「こんな所にいたのか、探したぞジル」
シュトラールを撫でていた手をとめ、振り返るとそこにはジルが配属された班の班員の一人である先輩がそこにいた。
「どうしたんですか?今日はこの後何も無かったと思うんですが、違いましたか!?」
自分の記憶ではそう思っていたが、もしかして見落としがあって実はこの後に何かあったのでは無いかと焦るジル。
だが、その兵士はそうじゃない、といった感じで首を降った。
「この後は特に何も無いからそう焦るな。
分隊長がお前を探してたから、代わりに俺が探しに来たんだ。
部屋にきっと戻ってるはずだ、早く行ってこい」
分隊長─ここでいう分隊長とはキース・シャーディスの事だ。
ジルが入団式を終え、配属されたのは、キースが直接指揮を執るキース班だった。
「了解です!
シュトラール、そういう訳だから今度は引き止めないでね」
先輩兵士からシュトラールへと向き直り、ひとつ頬を撫でると今度は邪魔されずに厩舎から出ることが出来た。
コンコンッ─
「分隊長、ジル・ラディウスです」
「入れ」
入室の許可を貰ってキースの執務室にジルは入った。
「分隊長、何か御用があると聞き、こちらに参ったのですが…」
何やら書き物をしているキースが手を止め、ジルを見る。
「そんな大したことはでは無いのだがな。
以前、カルラに顔を見せに行くという話をしたのを覚えてるか?」
入団式の日の訓練中に言われた事を思い出し、キースに頷く。
「はい、ちゃんと覚えてます」
「そうか、急なんだが、今日の夜は都合はつきそうか?」
「はい、私は大丈夫です」
「それならあと四時間後に本部入口で待ってるから私服に着替えてから来てくれ。
話はそれだけだ」
「了解です」
そう言うとジルは敬礼してキースの執務室から退室した。
執務室から廊下へと出たジルはパタンと扉を閉め、くるっと向き直り扉を背に歩き出すと長身の金髪の男性─エルヴィンがこちらへと向かってくるのが見えた。
一か月前のあれ以来エルヴィンは特に変わった行動を取る事はなく、普通に過ごした。
特に二人きりで会うということが無いからではあるが……