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〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─

第10章 意外な弱点


この日もジルは己に与えられた芦毛の牡馬シュトラールを世話していた。

「どう?シュトラール痛くないかしら?」

壁外調査の為に長距離を走れるよう改良された馬の体躯は立派なものであり小柄のジルがブラシ掛けするのも一苦労だった。
このシュトラール、牡馬故なのか男性を背に乗せるのを徹底して嫌がり、女性でも選り好みする何ともふてぶてしい馬だったが、何故かジルには大人しく触らせるし、乗る事も嫌がらなかった為、必然的にジルの自馬となった経緯がある。
そんなシュトラールだが、馬としての能力はとても良く、全力で走らせれば光線を描くように早く走れるさまからシュトラールと名付けられたほどだ。

「よし、これでおしまい。
シュトラール、そろそろ私戻るね」

ブラシ掛けが終わり、シュトラールの頬を撫で厩舎から出ようとシュトラールに背を向け歩き出そうとするも、シュトラールがジルの髪を噛み、ジルが出ていこうとするのを阻止した。

「ちょ、ちょっと、シュトラール、痛いってば─」

ジルは噛まれた髪を掴み後ろを振り向くと、ジルが後ろを振り返った事に満足したシュトラールがブフンッと鳴き、噛んでいた髪を離す。

「もう、あなたったら甘えん坊なんだから」

困ったように眉を下げ、己の愛馬であるシュトラールの灰色がかった毛並みを優しく撫でるジル。
本当にあのふてぶてしい馬だったかと錯覚するくらい甘えん坊の馬だ。
そんなに長い時を過ごした訳では無いのに、とジルは思うのだった。
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