〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第6章 訓練兵団
入団初日から一晩経った翌日。
今日は立体機動装置の適性を判断する姿勢制御訓練が行われる。
立体機動装置を扱う訓練の中ではこの姿勢制御訓練は初歩中の初歩である。
だが、この訓練にて適性が無いと判断された者は訓練地を去らねばならない。
「この訓練は両腰にロープを繋いでぶら下がるだけだ。
どうだ、こんな訓練簡単だろう?
貴様らの中で何人残るか俺は楽しみでならない」
こんな簡単な訓練は出来て当たり前だと言わんばかりの言動である。
嫌味満載のこの教官の態度と言葉に萎縮したのか、上手く姿勢を保てず適性が無いと判断された者も何人かいたようだ。
「次!
ジル・ラディウス!!」
名を呼ばれたジルは、耐Gベルトのフックにロープを繋ぎ、横にいる同期に装置のレバーを回してもらえば、地に着いていた足が宙に浮いた。
宙に浮いた状態で身体をふらつかせることも無く、そのままの姿勢をしばらく維持していると教官から適性ありとの判断を下された。
自身の適性検査を終え、今度は他の同期達の検査を手伝えば本日の訓練は終わりのようだ。
今日、失敗した者は明日の訓練でも適性無しと判断されれば本当にここから去らねばならないようだ。
自身には関係ない事ではあるが…
訓練が終わり、その後は決められた諸々の当番があり、その当番を終えれば夕食を取り、消灯まで自由時間だ。
ジルに課せられた当番は薪割り当番であった。
薪割りを行う為、薪割り場に向かえば、もう一人の当番の訓練兵が先に薪割りを始めていた。
「遅れてごめんなさい、
私もすぐ始めるわ」
ジルも薪割り斧を手に取り、薪割り台に薪を置こうと、積まれた薪に手を伸ばした。
隣にいたもう一人の訓練兵がジルを見ると声をかけてきた。
「お前、ジルと言ったか。
お前も当番だったんだな」
ジルが横を向きその人物の顔を確かめれば、あの失礼な男─ミケがそこにいた。