〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第14章 探り合い
エルヴィンに言われた通り、頬の熱が治まりいつもの顔だ、と手鏡で確認したジルはエルヴィンの部屋を出て、先程まで見ていた訓練場へと足を運んだ。
立体機動装置は着けずに、ただ見学だけしに来たジルに一人の人物が猛スピードで近寄ってくる。
「ジルーーーーーーッ!!」
その人物はジルを確認するや否や、全速力で駆けジルへと抱きついてきた。
「ッ─!!」
ジルは凄い勢いで抱きついてくる人物に何とか耐え、その人物を引っ剥がし、地に投げ捨てた。
「ハンジ!危ないでしょ!」
ジルが地に転がした人物─ハンジ・ゾエはジルの二期下の後輩だった。
「ジル、酷いじゃないか」
イテテと臀を擦りながら立ち上がるハンジにジルはため息をつく。
「酷いじゃありません。
ハンジ、貴方ももう班員をまとめる班長になったんだから少しは落ち着きをみせたらどうなの?」
「えー!私は巨人と同じくらいジルが好きなのに」
このハンジという後輩はとても風変わりな人物だ。
訓練兵時代の成績が特に優秀という訳ではないが、巨人に対する情熱は誰よりも強かった。
そういう事もあってハンジは調査兵団を志望したそうだ。
訓練兵時代の成績が優秀という訳では無いものの、数年も調査兵団に所属していられるという事を考えれば成績等当てにならないものだ。
「はぁ…
ハンジ、巨人と同等に扱われて喜ぶ人はいないと思うけど…貴方以外はね」
「そうかなー?」
「そうです!」
分かった分かったと笑っているハンジはそういえば、と急に真顔になりジルへと質問する。
「そういえば、ジル。
貴方は装置も着けずに何故ここに?
確か、エルヴィンは今日は会議だったよね。
あぁ、もしかして、あの例の三人の様子見に?」
「まぁ、そんな所かな」
ジルはエルヴィンと一緒に会議に出れなくなった理由を伏せ、ハンジに話を合わせた。