〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第14章 探り合い
「全員注目!!」
調査兵団本部内にある広場に兵達が集められていた。
団長であるキースが三人の調査兵と共に並んで兵達の前に立ち、傾注するようにと声を張っていた。
「今日から我々と共に戦う三人を紹介する。
お前達、皆へ挨拶しろ」
「……」
キースにそう言われるも、リヴァイは中々挨拶をしようとしない。
その場にいる者が中々口を開こうとしないリヴァイを訝しむように見る視線を感じ、ようやくリヴァイは口を開き、ただ一言こう言った。
「…リヴァイだ」
この姓も言わない一言だけの挨拶に、調査兵達はリヴァイを不審に思い、その場に重い空気が漂う。
だが、その重い空気をものともせずイザベルが明るく挨拶する声が辺りに響いた。
「イザベル・マグノリア、よろしく頼むぜ!!」
ファーランに至っては心臓を捧げるという意味の敬礼の手の形が違うままにやってしまう。
「ファーラン・チャーチ…です」
この三人の態度に調査兵達は更に訝しむ目を彼等に向ける。
この異様な空気が続く中、キースは口を開く。
「三人はフラゴン分隊に入る。
フラゴン、面倒を見てやれ」
これを不服と思ったのかフラゴンが聞き返した。
「じ…自分の隊でありますか!?」
「なんだ不満か?」
「い、いえ、てっきりエルヴィン分隊長の下へ入ると思っていたものですから…」
「エルヴィンには壁外調査で行う新陣形に備え全体指揮の補佐をまかせる。
そのため彼に新兵の面倒を見る余裕はない。
わかったか?」
キースから説明を受けたフラゴンは若干の不満を残しつつも、キースへ敬礼を返し了承の旨を伝えた。
「はっ!承知しました!!」
「エルヴィン、ロヴォフの方はどうなってるの?」
エルヴィンの個室にあるソファで優雅にお茶を飲むジルがエルヴィンへと問う。
「あぁ、問題ない。
確実に奴を落とせる証拠が集まってきている」
「そう…
あの三人─いえ、リヴァイは全てを知ってるって知ったらどう思うのかしらね」
「さぁな…激高して殺しにくるのは間違いないだろうな」
自分の命が脅かされるかもしれないというのに、エルヴィンは軽く笑いながら答えた。
この返答にジルは呆れたというような表情を見せたのだった。