〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第13章 変革の一翼
エルヴィンはファーラン達には何も語らず、再びリーダー格の男へと話しかける。
「私の名前はエルヴィン・スミス。
お前の名は?」
「………」
この問いにも答えない男にミケは掴んでいた男の頭を下水に押し付けた。
呼吸が出来ずに苦しそうに悶える男にミケは男の頭を引き上げる。
「がはっ!
ぐっ…ゲホッ…」
この水責めでも男は口を割らなかった。
「見上げた根性だが、このままではお前の仲間に手をかけることになるぞ」
「!」
ファーラン、イザベルがいる場所を男が見るとジルとローエンによって首にブレードを突き付けられた二人がそこにいた。
「やるならさっさとやれよ!」
そう威勢よく怒鳴ったのはジルが取り押さえているイザベルだ。
「てめぇ…」
男はミケに頭を掴まれたまま、エルヴィンを睨む。
エルヴィンは冷めた声でもう一度問う。
「お前の名前は?」
男も流石に仲間の命には変えられないと、ようやく重い口を開いた。
「……リヴァイだ」
男─リヴァイの名を聞いたエルヴィンはリヴァイに近寄り下水が溜まる地面に片膝をつけた。
そしてリヴァイにこう言った。
「リヴァイ、私と取引をしないか?」
「取引…?」
エルヴィンから聞かされたこの取引という言葉にリヴァイはエルヴィンに問い返した。
「お前たちの罪は問わない。
かわりに力を貸せ。
調査兵団へ入団するのだ」
このエルヴィンの言葉にリヴァイの頭の中である言葉が思い出される。
「断ったら?」
リヴァイは取引を断ったらどうなるのかエルヴィンへと問う。
「憲兵団に引き渡す。
これまでの罪を考えればお前はもとより、お前の仲間もまともな扱いは望めんだろう」
エルヴィンの話にイザベル、ファーランが苦虫を噛み潰したような表情をみせた。
「好きな方を選ぶがいい」
リヴァイは一度歯を食いしばるがすぐに表情を戻し、エルヴィンに顔を向けた。
「いいだろう。
調査兵団に入ってやる」