〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第13章 変革の一翼
「私が得た情報ではロヴォフは憲兵団へ物資を納品しているラング商会と癒着があり、壁外調査の中止で浮いた予算をそちらへ回そうと考えているようです」
このエルヴィンの発言にキースは驚く。
「その情報は信頼出来るのか?」
これに対してエルヴィンはしっかりとした眼差しで答える。
「ロヴォフ側が調査兵団の内情を探るために潜り込ませていた者を逆に利用して得た情報です。
信憑性は高いと思います」
この答えにキースは一瞬考える様子を見せるがすぐにエルヴィンへと確認をとる。
「それが事実だとして我々はどうする?
総統に直訴でもするか?」
エルヴィンは肯定する事無く首を振る。
「おそらく総統もある程度はご存知だと思います。
…表沙汰にならないのはなにか事情があるのでしょう」
エルヴィンが話終えると丁度、調査兵団本部に着いたのか、馬車を操っていた馭者が到着したことへの知らせと共に馬車の扉を開けた。
キースはため息をつきながら立ち上がった。
「…そうか俺はどうも政治というやつが苦手でな…」
馬車を降りようとしたキースにエルヴィンはキースの背に向かって一つ提案する。
「私に任せていただけませんか?」
エルヴィンのこの言葉にキースは馬車を降りようとした足を止め、振り返る。
「……どうするつもりだ?」
「私に考えがあります」
「考え?
たとえお前が貴族にツテを持っていたとしても説得で動くような相手ではないだろう?」
キースは馬車を降り、エルヴィンに諭すように話す。
だが、そこでキースは気付く。
エルヴィンがロヴォフ側になにか仕掛けようとしているのではないかと。
「……!
まさか…ロヴォフのほうか?」
この質問に対してエルヴィンは静かに無機質にも感じる声音だが、しっかりとした意思の元こう答える。
「団長。
それ以上はお聞きにならないでください。
“全ては私が独断で行うこと…”」
エルヴィンがなにか良からぬ方法でロヴォフの意見を変えさせようとしているのに気付いたキースはエルヴィンに振り返った。