〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第13章 変革の一翼
「これまでの壁外調査では遭遇した巨人をいかに倒すかばかりが重視されてきたが、君の提唱した案ではいかに巨人との遭遇を減らすかに重きが置かれている。
この逆転の発送は素晴らしい」
ザックレーに自身の案を評価されたエルヴィンはザックレーに向かって頭を下げる。
「評価していただき、光栄です」
そして再びザックレーは口を開く。
「通常の陣形とこの新陣形併せて使えば被害を抑えつつ、より遠くまでの調査遠征が可能になるだろう」
ザックレーの意見を聞き終えたキースは再びザックレーに問う。
「…総統…
ご理解いただけているなら何故…」
「議会の承認が得られんのだ」
ここでザックレーはふぅと息をつき、椅子に腰掛けていたが、立ち上がりながら話を続ける。
「以前から壁外調査の継続に難色を示す議員は多かった。
これまでは私がなんとか説得して予算を通してきたが、今や民意さえも君達を壁外に出すのをよしとしないようでね」
「…もちろん承認しております」
「今回はロヴォフ議員が強く廃止を主張されてな…
彼は貴族院でも大きな影響力を持ち、同調する取り巻きも多い」
「しかし…ここで止めてしまってはこれまでの犠牲が無駄になってしまいます!」
ザックレーの言葉にキースは酷く憤りを感じ、その憤りをザックレーへとぶつけるように声を荒らげた。
「エルヴィンの陣形を使えば必ずや─」
「キース」
キースの息巻いた説得をザックレーは彼の名を呼び止めさせた。
そして窓の外を見ていたザックレーはキースに向き直り一言告げた。
「わかってくれ」と。
これに対してキースはというと
「……中止はもう決定なのですか」
「五日後の議会で採決だが…覆ることはないだろう」
このザックレーの言葉にようやくキースは不満に思いながらも渋々了承した。
総司令部から調査兵団本部に戻る馬車の中でキースとエルヴィンは壁外調査中止の件について話し合う。
「団長、思ったとおりでしたね」
「…うむ…やはり、廃止派の中心はニコラス・ロヴォフか…」
腕を組み、考え込む仕草を取るキースにエルヴィンは話を続ける。