〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第12章 二人の想い
「はぁ…んッ─」
優しく触れ合っていただけの口付けはいつしか深いものへと変わっていく。
こんな口付けを…いや、口付け自体がこの前のエルヴィンとしたのが初めてなジルは経験不足によるものなのか呼吸がどんどん乱れていく。
苦しい…でも、気持ちが良い…
ジルは口付けがこんなに良いものだなんて知らなかった。
誰か来るかもしれない談話室でエルヴィンとこんな口付けをしている事でジルは翻弄されていく。
「っン…ハァ…エル…ヴィン…待っ…てッ」
立ってられなくなるくらい口付けに翻弄されたジルは、エルヴィンにストップをかける。
「大丈夫か…?」
こんなにもトロトロに溶かされたジルと違い、エルヴィンは何事も無かったかのような立ち振る舞いにジルは拗ねる。
自分はエルヴィンの兵服のジャケットを掴みながらでないと立っていられないと言うのに。
ジルはなんだか悔しくて瞳いっぱいに涙を溜めた目でエルヴィンを睨む。
「なんか悔しい…
エルヴィンってば余裕だね…」
そんな事をいわれたエルヴィンは表情を柔らかくしてこう答えたる。
「そんな事無いさ…
俺だって男だからな、こんな煽る様な表情をした女を前に冷静でいるのも辛いものだぞ」
エルヴィンから出た煽るという言葉にジルは首を振る。
「あ、煽ってなんか─」
慌てて否定するジルにエルヴィンはクスッと一つ笑うと自身の親指でジルの瞳に溜まる涙を拭ってやった。
「こんなに目に涙を貯めて、頬を赤く染めて、唇も赤くぽってりと熟して、俺にどうにかされたい、というような表情してるくせに」
「そ、そんな顔、してる…?」
「あぁ、そんな顔をして俺を誘ってるようにしか見えない」
誘ってる…
ジルはこの誘うの言葉の意味を知らないほど子供じゃない。
エルヴィンに指摘されると慌てて両手で顔を覆いエルヴィンに見られまいと下を向いて顔を隠したのだった。
そんな甘い空気が漂う談話室に一人の男がやってきた。
「おい、ジル!
エルヴィンにまた泣かされたのか!」
それは以前にエルヴィンとの事で泣いた夜を知っており、ジルの事を好いていてくれる同期…
ミケだった。