〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第12章 二人の想い
「すまない…」
エルヴィンは自分の失言にジルへと謝罪した。
「別に謝らなくても…」
エルヴィンと並んで歩いていたジルがこのやり取りが気まずくなりエルヴィンを越して前を歩く。
「ジル」
宿舎まであと少しのところでジルの後にいるエルヴィンが、足を止め前を行くジルの名を呼ぶ。
ジルも足を止め、エルヴィンがいる後ろを振り返る。
「どうしたの…」
「部屋に戻る前に少し話がある」
エルヴィンにそう言われ、二人は宿舎の談話室に入った。
もう夜も遅くなり壁外調査直後の談話室には誰もいなかった。
「それで、話って…」
椅子に座って二人は向き合うように対座する。
「あぁ。
…………俺には訓練兵時代に好きな女がいたんだ」
「─ッ!」
エルヴィンのゆっくりと開かれた口から飛び出た発言にジルは息が止まるほど驚く。
「その人は酒場で給仕をしていた俺とそう変わらない歳の女だったんだ」
そっか、エルヴィンには好きな人がいたんだ。
そりゃ自分なんかが想いを寄せても相手にされる訳なんて無かったんだ。
そう解釈したジルは悲しくなった。
「…………」
ジルはエルヴィンの話に相槌も打つことなくただ、エルヴィンの話に耳を傾ける。
「その女はどこかお前に似ていたような気もする。
見た目とかそういう事ではなく、彼女が纏う空気というか雰囲気が幼い頃のお前と似ていたんだ。
よく笑いかけてくれて人懐っこい感じの性格がお前を彷彿とさせたんだ…」
エルヴィンが話す内容になんて言っていいのかわからないジルは再び沈黙を貫く。