〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第12章 二人の想い
「ふぅー、よく食べたわ!
ごちそうさま、ありがとうエルヴィン」
食事を終え店を出るとジルは支払いを済ませてくれたエルヴィンへと礼を言う。
「あぁ、このくらい安いものだからな。
そんな礼などしなくて良い」
エルヴィンは何ともないように言うと、宿舎に向かって歩き出した。ジルもエルヴィンの横を歩きながら、自分の考えを話す。
「そうだとしても、奢ってもらって当然ってのも違うでしょ?
せめて、人としての最低限の礼儀くらいはやらせて頂戴」
真面目な顔で話すジルにエルヴィンは何か思い出すかのように軽く笑いだした。
「ハハッ。
義理堅いなジルは。
あぁ、お前は昔からありがとうという感謝の言葉を良く口にしていたな」
ジルはエルヴィンに言われ、幼い時にどうしてありがとうという言葉を良く口にしていたのか、その経緯を思い出す。
「うん、お父さんとお母さんが周りに人に助けてもらったり良くしてもらった時は必ずありがとうという感謝の言葉を伝えなさいって。
それがどんなに小さな事にでも感謝を伝えればお互いに気持ち良い気分になれるから、って。
でも、最近というか訓練兵団に入団してからはそんな相手に気を使えるほど余裕なかったかも。
いつもツンケンしててそんなに女の子の友達?はいなかったな。
調整日とかたまの休日だってこんな風に誰かと出かけるとか無かったし…」
エルヴィンはジルの幼い時の明るく人懐っこい性格を知ってるからかジルの友達がいないという発言に少し驚く。
そして、調査兵団に入団してからのジルの様子を思い出し、納得した。
確かに同室の同期の女達と一緒にいる姿を見たこと無かった。
見たとすれば、同じ訓練兵団出身のミケとローエンくらいだった。