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〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─

第12章 二人の想い


夕暮れ時もいつの間にか完全に日が沈み、空には星が輝く頃、ジルは一人中庭のベンチに腰をかけ、星空を眺めていた。
眺めると言っても、ジルの頭の中は先程ミケが言った遺体もない葬儀の事だった。
この先、調査兵団に所属していれば遺体無き葬儀を遠くない未来で体験する事は確定しているだろう。
致死率の高い兵団にいるのだ自分だけは特別なんて事はない。
そうなった時、自分は誰が悲しんでくれるだろうか。

調査兵団を選んだ事を悔いる事は無い。
幼い時からジルは調査兵になる事を第一に生きてきた。
今更、生き方を変えたとてその先に何がある。
だが、後悔は無いがそれこそ調査兵を続けて何の意味があるのか…
エルヴィンみたいに強い意思があった訳でもなく、ただエルヴィンが行くなら己も行く─
そんな薄い動機で調査兵をやれる程甘くない事を壁外調査で思い知った。
こんな中途半端な人間はいつか、仲間を危ない目に合わせてしまうのだろうか…
もし、ミケやローエンが己のせいで危ない目にあってしまったら…ジルは急に不安が募る。
考えてみれば自分というものが何も無い事に気づく。
こんな事に今更気づくなんて、とジルは自嘲した。
とにかく、自分には巨人を討伐する技術だけはある。
三年間全力で学んだ知識と技術。
これだけはジルの中で唯一誇れるものだった。
それともう一つ。
エルヴィンとの約束─
ジルにとってこの約束だけは何事もにも変えがたいものだった。
約束の内容というより、約束をしたという事自体に意味があるが…
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