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〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─

第11章 壁の外へ


キースと共に先頭を行く団長達の近くへと馬を進める。


鬱蒼と生い茂る木々は巨人が潜むには最適の場所だった。
巨人の接近に気が付かなかった先頭の誰かが喰われたのか騒がしくなった。
キースは急ぎ先頭の団長のもとに馬を駆けさせたが、巨人の餌食となったのは団長だった。

団長が喰われた今、兵団内で指揮を取る者は第一分隊の隊長であるキースだ。
団長が喰われ、他の調査兵の被害も甚大だと確信したキースはすぐさま決断した。

「団長がやられた!!
撤退しろおぉ!」

キースの号令でその場にいた調査兵達は馬首を南から壁のある北へと反転させた。
ジルもそれに倣い北へと馬を走らせる。








森を抜け、平原へと戻ってきた調査兵団はたった数時間でかなり様変わりしていた。
多くの犠牲者が出た上、先頭を行く者の存在も変わっていた。



平原は森とは違い見通しも良い為、奇襲を受ける事は少ないのでその事だけは有難かった。
勿論、戦うことを選択すると立体機動装置の特性を活かせないのは辛いところだが。







森を抜けてどのくらいが経ったのか、何度か巨人共を討伐しつつ調査兵団は壁へと進路をとっていた。

「ジル、大丈夫か」

キースは新兵であるジルを気にかけ、馬を走らせながら、首だけ振り向き声を掛けてくれる。

「は、はい。なんとか…」

「応えられるようなら大丈夫だな。
もうじき壁も見えてくるはずだ。
それまで耐えろよ」

ジルの返答を待たず、キースは振り向いた体勢から元の姿勢に戻り、壁をめざし、馬を駆けさせる。











そろそろ日が傾く頃、調査兵団は壁内へと戻ってきた。
開門を知らせる鐘が鳴り響く─

大きな音を立て門が開かれていくのをジルはただ黙って見つめていた。
無事壁に戻ってきた事の喜びや、多くの仲間が犠牲になった事への悲しみの感情も今は湧かなかった。
ただ、壁内へと戻ってきたのか、という事実だけしか認識できてなかった。
それくらい今日の一日は衝撃的だったのだ。
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