• テキストサイズ

〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─

第11章 壁の外へ


それは雲ひとつなく晴天に恵まれ日だった。

ジルは自分に与えられた馬─シュトラールに跨り、深い色合いの生地に調査兵団の象徴である自由の翼が刺繍された外套を身に纏い門が開かれるのを待つ。
ジルは手綱を握る手に力が入るのを感じた。
この大きく高い壁の向こうには何があるのか、それは調査兵を選んだ者のみが知れる特権だ。

馬上で待つジル等調査兵の耳に入るのは期待が込められた明るい声援ではなく、人々の嘲笑に罵声。
そして壁上固定砲が火を噴く砲撃音だ。

調査兵団所属の援護班が壁上固定砲で壁周辺の巨人の掃討にあたっている。
しばらくすると壁上固定砲の砲撃が止み、あたりは静かになる。
そして門が開かれ、そこへ団長を務める男の声が響く。

「これより壁外調査を開始する!
総員私に続けーー!!」

馬が高く嘶き、先頭の団長は門外へと勢いよく飛び出し、それに続けと調査兵団は壁外へと飛び出して行った。





ジルは手綱をしっかり握り、前を行くキースやその班員等に置いていかれまいとシュトラールを走らせる。
馬を走らせ、その振動はかなりのものだが、ジルは己の心臓の高鳴りを強く感じた。
初めて壁外へと足を踏み入れればそこは壁がない世界が広がっていた。
遮られることも無い青い空はどこまでも遠くに広がり、大地もどこか陰気臭い壁に阻まれることも無く緑の草原が広がる。
こんなにも美しく、長閑やかな光景に本当に巨人が蔓延っているなどまるで信じられなかった。
ジルが感じた壁外調査の感想は先ずはこんなものだった









壁から出てそう遠くもない地点でジルは初めて巨人と遭遇した。
巨人は到底人間では出来ない体勢で走ってくる。
調査兵の誰かが叫ぶ。
奇行種だ─と。
初めての壁外調査、それも初めて巨人と遭遇したのが奇行種なんて。

縦に並走する調査兵団の脇を突くように向かってくる奇行種に、団長は兵を散開させた。
奇行種と一定の距離を保つように離れる兵達に奇行種は自身の正面にいる兵達に狙いを定め襲いかかった。
/ 149ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp