〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第10章 意外な弱点
エルヴィンは不思議に思った。
妹のような存在にひと月前、何故あのような事ができたのか、ジルが己の事で慌てふためく所を想像して好ましく思っている自分がいる事に。
そして、自分に好きな女がいた時のことも思い出していた。
あの時、調査兵になり先の見えない己は女を幸せにしてやれないと悟り、想い人を諦め調査兵になった苦い思い出。
かの女性もジルと同じ髪色をしていたな、とふと思い出すエルヴィン。
「エルヴィン?」
自分が答えたきり反応を見せないエルヴィンにおずおずと声をかけるジル。
「あぁ、なんでもない」
そう一言呟きエルヴィンはジルの前を過ぎ、振り返りざまにほら、行くぞ、とさっさと行ってしまった。
ジルはそんなエルヴィンの背を見失わないように小走りでエルヴィンの元へ追いつき、共に宿舎へと戻ったのだった。