〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第10章 意外な弱点
キースがジルを背負いながら宿舎への道を歩いていると、見知った顔と偶然出会う。
「エルヴィン」
「分隊長、後ろに背負ってるのは…」
外はもう闇に包まれた夜であり、街灯の灯りだけではキースが後ろに背負う人物を特定することが出来なかったエルヴィンはキースに問う。
「ジルだ」
キースの答えにエルヴィンは驚く。
先程、ジルの話では今日は同期と会うと言っていたからだ。
「今日はジルと二人で?」
「お前にそんな事を答える義務は無いが、まぁいい。
いつぞやだか、お前の班員の前で話していた事だ」
そういえば、とエルヴィンはひと月前の訓練所での一コマを思い出す。
確かジルがシガンシナ区に住んでいた時の母親の同僚がジルを心配していたから会ってやってほしいとキースに誘われていたな、と。
「それでジルはどうして分隊長に背負われているんです?」
「変な邪推はするなよ。
酒を初めて飲んだらしく、酒と相性が悪いせいか寝てしまったんだ」
キースは泣いた事はエルヴィンに伝えない方が良いと思い、そこは伏せてエルヴィンに説明した。
「そうですか…」
「ここであったのはちょうど良かった。
エルヴィン、俺の代わりにジルを宿舎へ届けてくれ。お前ももう戻るのだろう?
俺は飲み直してくる。
ジルのせいでそんなに飲めてないんだ」
「了解しました、ジルは引き受けます」
キースからエルヴィンの背へと背負われたジルは深く眠っていて起きた様子はなかった。
「エルヴィン」
「何か?」
「ジルとお前にどんな関係があるか知らないが、兵団内の和を乱すような真似はやめてくれよ」
キースはそういうと来た道を戻り、暗闇に消えていった。
その場に残されたエルヴィンは背負っているジルの寝顔を見ると宿舎への道を歩き出した。