〖進撃の巨人〗Raison d'etre ─贖罪の贄─
第10章 意外な弱点
カルラの調査兵なのか?という問に対してジルは先程とはうってかわり、はっきりとした口調で答える。
「今期訓練兵団を卒団して調査兵になりました!
分隊長の直属のキース班の一員なんれす!」
ジルは再びビシッと敬礼を決める。
酒に酔いへらっとした顔のジルとは反対にカルラは青ざめた。
「キ、キースさんが勧誘したのかい!?
女の子のジルちゃんが調査兵になるなんて!」
キッと睨むような目付きでキースを見るカルラにキースは俺も入団してからアマリアの娘という事に気がついたんだ!と慌ててカルラに説明する。
「ジルちゃん、調査兵なんてやめることはできないのかい?」
「それは…だめです。約束したんです…」
「約束?誰とだい?」
「エルヴィン…」
キースはジルの口から自分がよく知る人物の名前が出てきて驚く
そして、不思議に思った。
エルヴィンとジルはどういう関係なのか、と。
「その、エルヴィンって人とどんな約束したの?」
「…………」
「ジル、エルヴィンと何の約束をしたんだ」
先にカルラ、そしてキースもエルヴィンとの約束の内容をジルに問う。
「いえません…でも…」
「でも?」
「エルヴィンはこの約束はどうでも良くなったかもしれない…
約束というか私の事が邪魔なのかな…」
そう言葉にすると、ジルは酒に酔ってヘラヘラ笑っている顔から今度はしくしくと泣き出していた。
「ちょ、ちょっとジルちゃん!
いきなり泣き出して…」
酔っ払い特有の症状ではあるが、酒に酔うと人間の本心がむき出しになるというのはよく知られている事だ。
ジルにもいつも言えない悩みがあるのだろう。泣くほどまでに深刻な悩みが。
そして、それが自分が良く知る人物が関係している事は確かで、キースは何とも複雑な気持ちだった。