第7章 ボナペティート・アモーレ・ミオ
「ナナ、君の入学祝いがまだだったね。」
橘ジンはそう言うとわたしに紙袋を渡した。
「ありがとう。これって。」
「洋服だ。君に似合うと思ってね。」
アイボリーの春っぽい可愛らしいワンピースが入っていた。
「へー。かわいいじゃん。ありがとう。」
「どういたしまして。部屋で着替えてくると良い。クリーニングにはもう出してある。」
「え?」
「それを着て私とデートしてくれないか。行き先はもう決めてあるのだよ。」
「うん。分かった。」
わたしは部屋でワンピースに着替え、橘ジンの待つリビングに戻った。
「とてもお美しいです、流石は我が姫君。私の見立てに狂いはございませんでした。」
「ありがとうございます。わたしの手を取ってくださいませんか、王子様?」
「もちろんですとも。姫を我が夢の城へお連れしましょう。」
橘ジンはわたしを抱きかかえた。
わたしは驚いて声を出してしまったが、それを見て橘ジンはくすりと笑った。
橘ジンに連れられてわたしは昼の繁華街にやってきた。20〜30代くらいの女性が多いように見受けられた。
「それで何か食べにでも行くの?」
「ああ、イタリアンを食べに行こう。」
「良いね。そういうところでデートしたかったんだよ。」
わたしは橘ジンの腕に抱きついた。思ったよりも筋肉質な大人の男性の腕だ。シトラスらしき良い香りもほのかにする。
「どうした?今日のナナは甘えん坊だね。」
「そういう気分なの。」
「君はかわいいな。」
橘ジンは私の髪を掻き上げて額にキスをした。
わたしと橘ジンはカップル繋ぎをしたまま目的の店へと辿り着いた。
店構えを見てかなりの高級店だと分かる。
わたしは少し緊張してしまった。
「肩の力を抜きたまえ。私が君をエスコートしてあげるから何の心配もいらないよ。」
橘ジンがそう言ってくれて少し気が楽になった気がする。
中に入るとウェイターが出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。」
「12時に予約をしていた橘だ。」
「お待ちしておりました。席へご案内致します。」