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ジンと暮らせば【無能なナナ】

第5章 ジャスト・ア・ドリーム


わたしは橘ジンの部屋の前でチャイムを押した。
しかし一向に彼が出迎える様子はない。
まだ寝てるな。もう11時なのに、だらしない奴め。

わたしは合鍵を使って中に入った。
すると汚部屋が目の前に現れた。コンビニ弁当の食べた後や空きペットボトルなどが散乱している。
またわたしが掃除してやらないといけないのか。
橘ジンは幸せそうに眠っている。
寝顔はかわいいのが無性に腹が立つ。
わたしは寝ている橘ジンの鼻をつまんでやった。

「ふにゃ?」

情けない声を出して橘ジンは目を覚ました。

「おはよう橘ジン。」
「んー。まだおはようじゃない。ねる。」
「もう11時。起きなさい。」
「ナナもいっしょにねよ...。」

寝惚けた橘ジンはわたしを布団の中に引き摺り込んだ。

「ちょっ!やめっ!」
「ふふふ。ナナはやわらかいね。おやすみ。」

橘ジンはわたしを抱いたまままた眠りについてしまった。
わたしは呆れてため息を吐いた。
でもこういうところがかわいいんだよな。
わたしも少し眠ることにした。


「おはようナナ。起きて身支度をしたまえ。ランチと洒落込もうではないか。」

橘ジンの声が聞こえる。どうやらわたしは眠っていたようだ。

「眠り姫はキスでしか目覚めないのだったね。」

橘ジンはわたしにキスをした。

「ん...。おはよう橘ジン。」
「おはようナナ。私が作ったフルコースが冷める前に顔を洗っておいで。髪は私がとかしてあげよう。」
「分かった。じゃあお願いするね。」

ゴミが散乱していた部屋はすっかりキレイになっていた。

「え?なんで?」
「私が愉快なマジシャンである事を忘れていたのかね?だらしない私の姿はさぞ愉快だった事だろう。」

橘ジンはメガネを指で持ち上げ不敵な笑みを浮かべた。

「『何にもできない私』と「何でもできる私』、君はどちらがお好きかね?」
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