第4章 マイ・グラデュエーション
「ナナ、卒業式おめでとう。」
「ありがとう橘ジン。」
この春、私は通っていた学校を卒業した。
「この間のテストの結果も良かった事だ。何か君にご褒美をあげなくてはいけないね。そうだ。花見にでも行かないかね?」
「でも、まだ桜の時期には少し早いよ?」
「桜だけが花見ではない。まあ任せたまえ。」
橘ジンは冷蔵庫から何かを取り出した。
ピクニックバスケットだ。
「ランチの準備なら出来ているよ。」
「相変わらず手際が良いね。」
わたし達はとある植物園にやってきた。
確かに木々にはピンク色の花が咲いていた。
「椿だ。日本が原産なのだよ。」
「そうなんだ。綺麗だね。」
「ああ、君ほどではないがね。」
橘ジンはふっと声を漏らして微笑んだ。
「では、そこでランチと洒落込もうではないか。」
わたし達は芝生の上にシートを敷いて座った。
橘ジンはバスケットを開けた。
中にはサンドイッチが入っていた。
「わぁ!美味しそう!」
「ローストビーフとオニオン、エビとアボカド、照り焼きチキンと玉子、デザートにイチゴとカスタードクリームも用意してあるよ。」
橘ジンはおしぼりを手渡してくれた。
それで手を拭いてからわたしはサンドイッチを手に取った。
「いただきます!」
「召し上がれ。」
一口頬張ってみたが、相変わらず橘ジンの作ってくれた料理は美味しい。
「では私も頂くとしよう。」
歓談しながら2人でランチを楽しんだ。
ランチを終えると、橘ジンは水筒から温かい紅茶を紙コップに注いでくれた。
「ありがとう橘ジン。」
「どうたしまして。今日はアップルティーを淹れてみたよ。」
一口飲んでみると、リンゴの爽やかな風味が口中に広がった。
「いつもありがとう。橘ジンには感謝してるよ。」
「お礼を言うのは私の方だ。君と出会ってから私は毎日が楽しい。君は私の生きがいなのだよナナ。」
橘ジンはわたしの頭を撫でた。
「桜が咲いたらまた花見をしよう。」
「もちろん。その時はまた美味しい物作ってよね。」
「花より団子とはよく言ったものだ。」
顔を見合わせてわたし達は笑った。