第5章 Episode:05
「うっざいわね。なんなのよ!?」
「っ……お金でも何でも払う、から、それだけ、は……!」
「はぁ?聞こえないんだけど?」
綾瀬が私の真っ正面に歩み出て、苛立ちを湛えた瞳で私を見下ろす。
かと思ったら、不意にその場にしゃがみ込んで、前に突き出た私の片腕の袖を捲った。
ポケットから煙草を取り出して火をつける、ニィと顔を歪ませた。
まさ、か。
「二度と生意気な口聞けないようにしてあげる」
言って、綾瀬が露になった私の皮膚にゆっくりと煙草を近付けていく。
これから訪れるであろう痛みを予想して、全身の毛穴から冷や汗が噴き出るのが分かった。
バクバクと暴れている心臓に比例するように身体が面白い位に震え出し、歯もカタカタと乾いた音を奏でて。
もう駄目だ……そう思って目をぎゅっと瞑った、その時。
「……ぶはっ!」
堪りかねたように噴き出された笑い声。
それを筆頭に、辺りがあっという間に笑い声で包まれる。
心底面白い、という感じの。
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