第5章 Episode:05
それに、それは野薔薇ちゃんから貰った大切なもので、私にとってもすごくすごく大事な。
更に続けられた言葉に、私は今度こそ真っ白になってしまった。
「ま、今日はこれで勘弁しといてあげる。大事なものなんでしょ?無くさないように、私が持っててあげるわね」
「!……」
「根暗のくせに色気づいてんじゃないわよ」
機嫌良さげにそう言って、背を向けて去って行こうとする綾瀬達。
予想もしていなかった展開に、うまく頭がついていかない。
でも、身体の内側から鳴り響いている警報が、駄目、絶対駄目って、私に訴えてるみたいで。
考える前に、身体が先に動いてた。
「!?」
体当たりしながら、後ろから綾瀬に掴みかかる。
「なによ、離しなさいよ!」
「、れ、だけ、は……っ」
「はあ!?」
「それだけは、だめっ……!」
返して、と情けない程に震えた声で言う前に、私の貧弱な身体は周りに居た子達の手によって呆気なく綾瀬から引き離された上に、二人がかりで地面に押さえつけられた。
容赦ない上からの圧力に、地面に触れている片頬が、土と擦れて痛んだ。
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