第5章 Episode:05
「っ!」
人通りが全くない体育館裏に連れ込まれ、思いっきり壁に叩きつけられる。
更に、痛みを感じる間もなく頭に鞄をぶつけられた。
咄嗟に頭を庇う私を、彼女らは優越感たっぷりに嘲笑っていた。
「この間アンタのお友達が足ひっかけてくれたおかげで、痛い思いしたんだけど?」
「なっ……」
「代わりに慰謝料払ってくんない?」
理不尽な物言いに一瞬耳を疑うものの、彼女はニヤニヤ笑っているばかり。
でも、冗談なんかじゃない。本気で言ってるんだ。
「お、お金なんか持ってな……かはっ!」
最後まで言い終わる前にお腹に蹴りを入れられる。
顔とか目に見えるところを攻撃してこない辺りが、ひどく彼女ららしい。
呻く間もなく胸ぐらを掴まれ力任せに引き上げられて、上のボタンがいくつか千切れたのがブチブチッという音で分かった。
「口答えすんじゃ……」
至近距離で凄もうとした集団のリーダー格、綾瀬(あやせ)の動きが、不意にぴたりと止まる。
綾瀬の視線は私ではなく、別の何かを捕らえていて、首、ではない。もう少し下だ。
ボタンが取れて露になった、私の、胸元ー…。
「!」
ハッと手を伸ばす前に、勢い良くむしり取られてしまう。
次の瞬間には、綾瀬の手の中で野薔薇ちゃんがくれたペンダントが、ゆらゆらと揺れていた。
「へー、いいのつけてんじゃん。アンタには全っ然似合ってないけど、もしかしてこの間の男に貰ったの?」
綾瀬の言葉に、周りに居るクラスメイト達もクスクスと笑い出す。
カッと顔面が熱くなった。
分かってる、分かってるよそんなこと。
*