第7章 恋心
白哉の霊圧が徐々に上がっていく。
恋次は白哉に声をかけようとしたが、タッチの差で白哉の足は執務室へと向かっていく。
(やば…っ)
このままいけば、二人と正面衝突してしまう。
恋次は慌てて白哉を追った。
そんな恋次を他所に、白哉は怒り心頭だった。
自分の執務室で美穂子に告白するなど、どういうつもりなのか。
心の中にあったどす黒い感情が爆発しそうだった。
「―…お断りします」
戸を蹴破ってやろうとした瞬間、美穂子の言葉に白哉はぴたりと動きを止めた。
戸の向こう側で、美穂子の冷静な声が聞こえた。
「理由、きいてもいいですか?藍野さん…好きな人とかいる、とか」
「―……好きとか、そういう以前に私はこの世界の人間じゃありませんから」
少し寂しそうな声が、白哉の心を刺した。
自分に言われたわけじゃない。
それなのに―…なぜか、心が痛む。
「そんなの!関係ないです…っ俺は」
「関係ないわけ、ありません。いつ私は殺されても、いつ世界から消えてもおかしくないんです。そんな―…不安定な私なんかを選んじゃいけません。あなたはあなたの幸せを叶えてくれる女性を―…選ぶべきだと思います。好きだといっていただけたことには感謝をいたしますが…ごめんなさい」
白哉はそっと戸を離れた。
同時に、湯川は戸を勢い良く開けて出ていった。
白哉の後ろから追いかけてきた恋次とぶつかりそうになりながら。