第7章 恋心
白哉は数人の席官を連れて、六番隊舎へ戻ってきた。
今回の虚は数が多いということで、席官を多く連れていった。
一応、恋次を置いていったが白哉は美穂子のことを心配していた。
勝手に外に出るような女ではないことは重々承知しているが、最近は自分の目の届かないところにいると心が乱れる。
―…この気持ちを自覚してからと言うもの、それは悪化の一途をたどっている。
「あれ、湯川どこいった?」
一般執務室の前を通りかかると、赤い髪をかきながら恋次が首を傾げてるのが見えた。
ふと、恋次の視線が白哉へと向けられた。
「あ、隊長!お疲れ様っす!」
「何をしている」
「あ、いや…二番隊からの書類を受け取ったんで、湯川に渡そうと思ったんすけど」
恋次が一般執務室の中を視線で探すと、別の男が出てくる。
「副隊長、湯川さんなら隊長達の執務室に行きましたけど」
「え? あー、そっか。隊長、俺も一緒に戻ります」
「あぁ」
恋次は教えてくれた男に一言言うと、白哉の後ろを歩いた。
それを気にすることなく、白哉の足は自分の執務室へと歩いていく。
今頃、執務室では美穂子が書類整理しているだろう。
(茶でも入れてもらうか)
美穂子の緑茶はどこか甘い気がするのは気のせいだろうか。
茶葉は給湯室に置いてあるものを使っているというから、温度か蒸らしで差が出ているのかもしれない。
それとも―…自分の気持ちのせいだろうか。
白哉は執務室の手前で、ぴたりと足を止めた。
「っ…と、隊長?」
突然止まった白哉に驚いて、恋次は急ブレーキをかけたことで衝突は回避された。
前方をじっと見つめる白哉に恋次は首を傾げた。
声が聞こえてくる。
霊圧を探れば、覚えのない霊圧とよく知った霊圧。
おそらく湯川とか言う男と―…美穂子だろう。
「俺と…その、付き合っていただけませんか!?」
恋次は目を見開いた。
湯川と言う男は席次こそ持っていないが、それなりに出来る男だ。
色男というと言い過ぎかもしれないが、それなりに身長もあるし真面目で優しい。
恋次は湯川と言う男が嫌いではなかった。
しかし、だからといって美穂子に告白するとは予想外だった。
恋次はふと自分のすぐ目の前から、漏れ出る霊圧に悲鳴をあげそうになる。