第7章 恋心
部屋の中から楽しげな声が聞こえてきて、美穂子は部屋に入るのを躊躇した。
せっかく妹が帰ってきたのに、水入らずのところを邪魔してしまっていいのだろうか。
けれど、さきほど使用人からは白哉が呼んでいると言っていたことを思い出して、美穂子は一つ息をついた。
(ご挨拶もしなければ…)
美穂子は一度目を閉じて心を落ち着かせると、部屋に向かって声をかけた。
「―…失礼します」
ふと、会話がやむ。
美穂子はゆっくりと戸を開けて、中にいた人物を見て動揺した。
(あの…写真の人?)
とても写真に似ている気がする。
けれど、印象は違った。
どちらかというと凛とした印象を持つ彼女は、どこか写真の人と雰囲気が異なる。
向こうも少し目を見開いていることに気づいて、美穂子は静かに部屋へと入った。
表情はできるだけ穏やかに保つようにして。
「遅くなり、申し訳ありません」
「いい。座れ」
「はい」
白哉の言葉に、美穂子は静かに従って膳の前へと腰を下ろした。