第7章 恋心
なにをしようというのか。
主のいない部屋に、許可なく入るなど。
美穂子は首を振って、一瞬だけ写真に視線を向けると自分の部屋へと足を向けた。
(あれは―…白哉さんの大事な人なのかな)
だとすれば、納得だ。
どういう経緯なのかはわからないが、部屋に写真を飾るほど大切な人なのだろう。
キューっと音を立てるように心が締めつけられる感覚に、美穂子はめまいがしそうなほど苦しかった。
ぎゅっと自分の手を握って、美穂子は自分の部屋に入ると戸を閉めた。
足がカタカタと小さく震えているのがわかる。
美穂子はずるずると自分を支えきれずにその場に座り込んだ。
あぁ―…なんてことだろう。
こんなにも、ショックを受けるとは思ってもいなかった。
美穂子は苦笑を浮かべて、顔を手で覆った。
こんな顔で、食事になどいけるわけもない。
幸い、まだ白哉は戻ってきていないようだから…もうしばらく時間はあるだろう。
それまでに、なんとかいつもの自分に戻らなければ。
この想いは―…抱いてはいけない。
自分はここの住人ではない。
自分はいつ殺されても、いついなくなってもおかしくない。
そんな自分が、誰かを好きになるなど―…あってはならないのだ。
「大人になるのよ―…美穂子」
ぼそりと、自分に言い聞かせた。
小さく、何度も何度も言い聞かせるように呟き続けた。