第6章 自覚
その頃、美穂子は自己嫌悪の思いでいっぱいだった。
あんなことを言うべきではなかった。
白哉はとても言いずらそうに、そして申し訳なさそうに美穂子を“監視”と言った。
きっと優しい彼のことだ。
あんなことを言えば美穂子が傷つくと思ったのだろう。
実際、その後の食事は非常に気まずい雰囲気を作ってしまった。
美穂子は大きくため息をつくと、戸の向こうに光りを感じて、戸を開けた。
そこには明るい月が、その光を称えている。
確か、自分がここへ来た時も―…こんな月夜だったような気がする。
水の中から見えた月は、とても明るかった。
水の中から外へ飛びたしたところは全く覚えていなかったが、水の中で見た月や泳いだ感覚は覚えている。
じっと空を見あがていると、隣の部屋の―…白哉の部屋の戸が静かに開くような気配がした。
美穂子は一瞬迷ったが、そっとそちらへ足を向けた。
数歩歩けば、そこには自分と同じように月を眺める白哉がいた。
白い寝着のまま、静かに空を見上げている姿は―…ひどく神秘的だった。
美穂子の心が、トクン…と鳴った。
その瞬間、無意識に顔がにやけそうになった。
あぁ…なんていうことだろうか。
美穂子は視線を一瞬迷わせた。
こんな時に―…自分が、彼らにとって幻なのだと気づいたばかりなのに。
彼に―……惹かれている。
「―…白哉さん」
美穂子は無意識に、彼の名前を呼んだ。