第6章 自覚
白哉は自室に戻り、ため息をついた。
あの時の―…食事の時の美穂子が、目の奥に焼き付いて離れない。
少し寂しそうな表情は―…確かに傷ついていた。
白哉は言い訳しそうになった自分をぐっと押さえて、美穂子に言葉をかけてやれなかった。
いくら美穂子を疑っていないのだと言ったところで、行動を変えてやることなどできないのだ。
そして、美穂子がこの家にいるのも―…命令であることに違いはない。
それが悔しい。
美穂子は白哉から見ても、とても頑張っている。
慣れない環境の中、必死に自分のできることをして、周囲に迷惑をできるだけかけないようにしている。
それでも、上層部は変わらない。
命令が覆るのことなど―…ありはしないのだ。
異端者、と自分を呼んだ美穂子が―…ひどく哀れに思えてしまった自分は、なんと愚かなのか。
白哉は頭を振ると、自室の戸を静かにあけた。
空には―…美穂子と出会った夜のような、美しい月が浮かんでいる。
「美穂子…」
白哉は無意識に、呟いた。