第6章 自覚
美穂子は朽木家に帰ると、部屋に向かって服を着替えた。
今日は十番隊の書庫にずっといたこともあって、身体が埃っぽい。
そんな状態でまさか食事をするわけにもいかず、家で着る用にもらった着物に袖を通すことにしたのだ。
「美穂子様、旦那様が御帰りになられました。お食事にいらしてください」
「はい。今、行きます」
美穂子は返事をすると、きゅっと帯を締めて鏡の前でくるりと全身を見渡しす。
変なところがないか確認するのは最近の癖だ。
美穂子の部屋から食事を取る部屋までは少し離れている。
ダイニングという扱いなのかはわからないが、こちらにきてからは白哉と時間が合う限り、その部屋で一緒に食事を取ることが多かった。
美穂子は小走りで部屋へ向かうと、部屋から光が漏れ、中から人の気配がした。
どうやら既に白哉が待っているようだ。
「お帰りなさいませ、白哉さん」
「あぁ、ただいま」
「お迎えにあがらず、すみません」
どうやら自分が着替えている間に帰ってきたらしい。
美穂子は少し申し訳ない気持ちになる。
「気にするな。座れ」
「はい」
美穂子は白哉の言葉に、用意された膳の前に腰を下ろした。
同時に、料理が次々に運ばれてくる。
それにを眺めながら、白哉の視線が美穂子へ向いていることに気づいて首を傾げた。
「あの…?」
「今日は、どうであったか聞いてもよいか」
「え、あぁ…十番隊のお仕事ですか。書庫の整理をし始めました。かなりの量があって…しばらくは書庫に籠りそうです」
今日はどんな分類が必要なのかを調べているうちに一日が終わってしまった。
けれど、その成果あって明日からはある書類を処理することができるだろう。
とはいえ、かなりの量があるので週二回という制限の中では、しばらく時間がかかりそうだが。