第5章 十番隊との出会い
冬獅郎は目をぱちくりさせると、苦笑した。
「―…別に真意っていうほどじゃない。優秀だと多方面から聞いて、うちは護廷十三番隊でもかなり多いほうだから手伝ってもらえねぇもんかと思っただけで。総隊長に確認したら構わないって言われたんで、本人と六番隊の許可を得ようと思っただけだ」
「つまり、美穂子の能力を純粋にかったということか」
「それ以外の他意はねぇ。藍野の仕事はこの隊長執務室と書庫のみで実施してもらうつもりだし」
冬獅郎は正直、このところ増えた書類の山に少々疲れきっていた。
いろいろと大きな戦いで、数多くの重要書類は喪失してしまったし、隊長も副隊長、隊士も数を減らした。
けれど、仕事というのは減らないものなのだ。
そんな中、美穂子といういい助っ人情報を聞いて、少しでも…と思うのは自然なことだった。
「―…そうか。なら、よいのだ」
白哉はホッと息をついた。
どこからともなく現れた彼女をどんな目で見るのか。
それが気になっていた。
六番隊でも最初の頃は隊士達が不信感だらけだった。
同じ目に―…十番隊で合うのは避けたかった。
今日、美穂子と一緒に十番隊を訪れたのは周囲に対する牽制と、そのことを冬獅郎に頼むためだった。
冬獅郎はじっと白哉を見つめると、小さく笑った。
「ちょっと変わった…か?」
「何の話だ」
「いや―…名前で呼ぶほど親しくなってたってのにも驚いたというか―…そういう気遣いをしてやりたくなるほど、藍野は大事ってことかと」
「朽木家預かり故」
「―…まぁ、そうなんだろうな」
にやりと笑う冬獅郎に、白哉は眉を顰める。
「―…私は六番隊に戻る」
「あぁ、藍野はきちんと送るようにする」
心配するな、と続けて冬獅郎が言うと白哉は一瞬だけ冬獅郎へ視線を向けて、そのまま部屋を出ていった。
部屋に残った冬獅郎は小さく笑って、自分の入れたお茶を飲みほした。
あんな人間臭い白哉を見たのは久しぶりだ。
これから、彼はもっと変わるのだろうか。
小さく笑うと湯呑を洗い物の籠に入れて、冬獅郎は執務室に置いてきた副官と美穂子の元へと向かった。