第5章 十番隊との出会い
「たいちょー!今日は遂に、美穂子が来る日ですねっ」
朝、珍しく時間通り執務室に出勤してきたと感心しかけて、冬獅郎はため息をついた。
「松本。静かにしてろ」
「えー、だってだって!噂じゃ、すごい優秀なんでしょ?六番隊の報書類の処理速度なんて10倍らしいじゃないですか!」
「あくまで噂だろ。あまり過度な期待をしてやるな」
冬獅郎はため息交じりで答えた。
確かに噂では六番隊の書類速度は十番隊のうん倍だとか、虚討伐の報告書の質が良くなったとか…とにかく彼女の仕事ぶりは夢物語かと思うほどの高評価だった。
実際、多くの隊士からそういう話を聞いて、美穂子に協力を依頼したのだが、実際に見てみない限りはわからない。
おそらく、あの六番隊の隊長が毎日手伝わせていることから考えても、期待はずれということはないだろうが。
それでも冬獅郎はそれが彼女の実力かどうかわからない。
過度な期待は彼女を失望させて、結果的に十番隊のためにならないのではないかと危惧していた。
「日番谷隊長!」
ドアの向こうから、隊士の声が聞こえた。
「入れ」
「はっ、失礼します。先ほど、六番隊隊長と本日より勤務する藍野美穂子殿が御到着されました」
「朽木隊長が?待たせているならすぐに通せ」
「はっ」
慌てて出ていく隊士を見送って、乱菊は目をぱちくりさせた。
「朽木隊長同伴なんて、予想外ですよねぇ」
「そうだな」
コンコン、と軽快な音が戸を叩いた。
「失礼する」
乱菊の声の後に、白哉は十番隊の執務室のドアを開けた。
けれど、白哉はその場から動かなかった。
「朽木隊長?」
冬獅郎は首を傾げながら、自分の席から立ち上がった。
白哉の視線は彼自身の後ろに向けられ、同時にゆっくりと一人の女性が前に出て部屋に先に入る。
「この度、お手伝いをさせていただくことになった藍野美穂子です」
美穂子がぺこりと頭を下げると、白哉は部屋に入って戸を閉めた。
「彼女は朽木家預かり故、一言挨拶に参った」
「そうだったんすか。わざわざ、申し訳ない。本来なら、依頼しているこちらが行くべきでだった」
「いや。兄の気にすべきことではない」