第1章 ありふれた日常
自分で言うのもなんだが、まぁいい線行ったんではないだろうか。
苦労もたくさんしたけれど、それもすべて今の自分を構成するのに必要だったことだ。
凡人である自分だが―…一流といわれる企業で、それでもなんとかやってきているのも、色々なことを経験できたからだと今は思う。
美穂子は鏡の前でささっと薄化粧をして、くるりと身体を回転させた。
「ん、よし。ご飯食べて、行きますか~」
机に置かれた携帯電話を片手に部屋を出ると、母が用意してくれた朝食とお弁当が置かれていた。
忙しい中、こうしてできる範囲で用意してくれる母には感謝している。
手を合わせてから食事をして、食器を洗うと弁当をバッグに詰めて家を出た。
いつもと同じ、ごくありふれた日常。
そのはずだった―…。