第1章 曇りのち雨
私は表情を変えず先に言われてしまった身分を明かす。
「こんなチビでも歳は同じとか不平等にも程があると今身を持って思い知っているところだ。濱音夜鷹、1級」
これから仲良くしていけるとは思えないであろう素っ気ない自己紹介を終えると、今まで端の席でダンマリを決め込んでいた黒髪の女子が口を開いた
「濱音ってあの有名な?同い年の女の子がいるなんて初耳だったわ〜…あ、私は家入硝子。得意なのは反転術式、階級は内緒。宜しく?」
ヘラリと笑う彼女からは仄かに煙草の香りがした。
「っつーかさー、1級のおチビさんが特級の俺に敵うと思ってんの?ウケる」
いちいち人を小馬鹿にしてくる男、五条悟。
お前の心の声、聴いてやる
ソッとヘッドホンに手を掛け外すと流れ込む本来聞こえるはずのない声
(こんな小さいのが俺より最強になるとかまず有り得ねぇし、いちいち噛み付いてくる感じがイジメ甲斐があって高校生活楽しくなりそうだわ〜)
っっ!!!コイツ…本当に腹が立つ…
心の声を聴いた私は一瞬こそ怒りが爆発しそうになったものの、ここで感情的になって五条に噛み付けば奴の思うツボだ。と冷静になり短く息をついてヘッドホンを再度付け直す
「馬鹿みたい…」
登校初日からこんな状態で私はまともに学べるのか不安を抱きつつ右隣には煙草の香りを携えた硝子、左隣に嫌味な五条、を挟んで奥に何か掴み所のない夏油
そして目の前にはガタイのいい漢
否
担任 夜蛾正道
私の高専1年としての不安が残る日常が始まった。