第2章 雨のち晴れ
2005年11月20日
呪術高専東京校
天気 快晴
4ヶ月程度の長期任務を終え帰校したが緊張からか門をくぐる事ができない。
理由は明白
「存在…忘れ去られてそう…」
苦笑いして何度目か分からない溜息をこぼす。
そんな私の複雑な心情なんて知らないとでもいうような綺麗な冬空
程よい陽射しながらも季節特有の冷たい空気が肺腑の奥まで沁みる。
「そんな所で何してるんだい?」
久々に聞いた声にハッと顔を上げると立っていたのは
「夏油…」
暫く会わない内に忘れられてたらなんて思ってた自分がアホらしくて思わず顔が緩んだのが夏油にバレたらしく、相手こそ違うものの任務に行く当日に門の前で頭をワシャワシャとしてきた時のように、いやその時よりとはまた違った夏油の手が降ってくる。
「おかえり」
何故だろう。
妙にその声にソワソワしてしまう。
聞き慣れない(おかえり)の言葉に反応できずソワソワしていると校舎の方から歩いてくる人影
「おっ帰ってきてるじゃ〜ん?夜鷹おかえり〜」
何も変わらない硝子がヒラヒラと手を振っている。
そのすぐ後ろに見えるのは五条だ
出発するときに意味深なこと言って私を送り出した時と変わらない雰囲気に心底安心した。
こうやって誰かに帰りを迎えられたことなんて無いからどうして良いか分からずに自分の中での精一杯の言葉
「っ……ただいま。」
「ぷっ、あの濱音がただいまだって〜笑うわ〜腹捩れるわ〜」
ゲラゲラと笑い出す五条
場の雰囲気ぶち壊しじゃんか。
「悟、夜鷹が不器用ながらに言った言葉を馬鹿にするのは良く無い」
いや夏油、不器用ながらってフォローになってる?なってるって事にしとこうか…
「なんでもいいけど早く戻ろう、夜鷹の土産が気になる」
いや硝子は何というか…うん。少しも変わってなくて安心するよ。