第2章 MEN
自分でもはっきりした動機は分からない。
煮えきれない態度で言葉を返してくれないヒロがもどかしく感じたのかもしれない。
もうどうにでもなれ、と私は衝動的にヒロの唇を奪ってしまったのだ。
ヒロは目を見開いて顔を赤くしている。大方、何が起こったのか理解が追いついていないのだろう。
寝不足なのだろうか。唇は所々皮が剥け、荒れている。
きっと凄く疲れてるんだろうなぁ、と思う。頑張り屋さんだもんね、ヒロは。
やっぱりこの子を甘やかす必要がありそうだ。
黒曜石のような暗い色の瞳、赤く染まる頬、コシのある綺麗な髪…
そのどれもが愛しくてたまらない。
全部、私のものに出来たらいいのに。
「んんっー!んっ」
とんとん、とヒロがサラシ布で潰されて固く補強された私の胸を叩いた。
苦しそうな顔。きっと息が吸えなくなって苦しいんだろう。
名残惜しいけど、ヒロを苦しめさせてしまったら本末転倒だ。渋々、自分の唇をそっと離した。
「ぷはっ…」
口が解放されて酸素を取り込もうとするヒロ。
そんな姿ですらも扇情的に感じてしまう私は上官として最悪なのかもしれない。
「ごめんよ、ヒロ。呼吸は、落ち着きそうかい?」
「大丈夫、です」
ヒロの顔はまだ赤い。
もしかしてキス、初めてだったのかな。
ヒロの心臓の音が私にも聞こえてしまいそうなくらい、ヒロがドキドキしてくれているのが分かった。
「あの…聞き間違いとかだったら、申し訳ないんですけど……ハンジさん、私のことを…愛してくれているんですか……?」