第2章 MEN
「……そうか。今まで、辛い思いをしたね」
ハンジさんは、目を伏せたままの辛そうな顔で口を開いた。
「いえ、辛いのは私だけではないし、この程度のことで弱音を吐く弱い自分が情けないです」
「まただ。そうやって、自分を卑下する。」
「………え?」
急に、ハンジさんの声のトーンが落ちた。
「そうやってヒロが自分のことを低く評価するのももう我慢できない。君は謙遜しすぎている。いや、謙遜を通り越しているな」
怖い。しかし、ここで食い下がる訳にも行かない。言葉だ。言葉を紡げ、ヒロ。
「っ、だからなんだと言うんですか、分隊長」
「いくらヒロでも、私の大切な人を貶すのは許さない。己のことを否定したり、誰かと比べたりするのは、私も悲しいんだ」
ハンジさんが静かに怒り、悲しんでいるのは分かった。
しかし、文脈がどうにも引っかかる。
「…??すみませんハンジさん、今の言葉、どういう、意味ですか?」
「はは。ついつい口が滑ってしまったようだね。ならしょうがない、腹を括るとしようか」
いつものようにカラカラと笑うハンジさん。
普段のように明るく、でも少し低いトーンの声がちょっと怖く感じる。
しかし、そんな思想は杞憂だったようだ。
次の瞬間、ハンジさんはいつもと同じ…いや、いつもより優しい表情を浮かべていた。
誰にも見せた事がないような、綺麗な表情。
「ねぇヒロ。私はね……」
「君が好きなんだ」