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内気な彼女

第1章 内気な子



「さて、次のドラマの仕事も決まったし。また台本が届いたら渡すわね。とりあえず送るから、帰る準備してなさい」

車を近くにつけてくるわ、といって湊川さんは先に楽屋から出て行ってしまった。長時間待たせてしまうのも申し訳ないから、急いで荷物をまとめていると突然スマホが鳴り出した。

パッと画面を見ると、そこには大好きな人の名前が出ていた。
名前を認識してすぐに電話を取る。

「もしもし、龍之介さん?どうしたんですか?」

今大人気のアイドルグループ、TRIGGERのメンバーである十龍之介さん。
私がお付き合いさせてもらっている人だった。

『あ、ななかちゃん。お疲れ様、今仕事終わってラビチャ見たよ。ドラマおめでとう、ずっと一緒に仕事したいって言っていた監督さんだったね』

収録が終わってすぐに連絡に気付いてくれることも、一番に電話をかけてくれることも、彼の優しい人柄のたまものなんだろうなっていつも思う。

常に私のことを気にかけてくれている優しい人。

「はい、そうなんです。嬉しくって、思わず龍之介さんに送っちゃいました。お仕事お疲れ様です」

『うん、ありがとう。一番に報告してくれるなんて嬉しいな。また撮影が入るとしばらく会えないだろうからそれまでに一回会おうね』

「はい、楽しみにしています」

本当はまだまだつなげていたいけれども、そういうわけにはいかないよね。
湊川さんも待たせちゃってるし。

「じゃあ龍之介さん、また予定送りますのでその時に調整しましょうね」

自分の欲を抑えて、電話を切ろうとしたときガチャッと扉があく音がした。

ノックもなしに突然部屋に響いたドアの開く音に肩が跳ねる。今日はよく誰かが訪ねてくる日だななんて思いながらも、誰が来たのか分からないまま心臓が嫌に響いてくる。

スマホを持つ手に力が入る。
誰が来たのか分からないけれども、ドアが開いて入ってくる人を見るとそこには同じくスマホを耳に当てた龍之介さんがいた。

「えっ」

「いきなりごめんね、同じ局にいるっていうのを思い出して。どうしても会いたくなっちゃって」

繋がっていた通話を切り、龍之介さんは私の目の前までやってきてその大きな体で私を包み込んだ。
私よりも少し高い体温に触れて一気に私の体温まで上がってくる気配がある。
そんな私に反して龍之介さんは抱きしめる力を少し強めた。
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