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内気な彼女

第1章 内気な子



基本的にこんな短期間で、ましてや今日初対面の人の下を名前を呼ぶ機会なんてない。

他の人はそういうこともないのかな。わかんないけれども…。

「あの!俺も下の名前で呼んで欲しいです!」

「ワタ―シもデス!」

次々と手を上げて、我先にという感じで身を乗り出してくる。
勢いあまって倒れてしまうんじゃなかってくらい。

「あの、じゃあ私も名前で呼んでもらえたら、なんて」

自分からこういったことを言うことなんてなかったから、とてもドキドキしている。
でも、いつもの緊張とは違ってワクワクス釣るようなドキドキ感に自分でもちょっと戸惑ってしまう。

すると、七瀬さんや六弥さんの表情が特に分かりやすく明るくなった。
なんだか、こんな内気な私に対しても明るく接してくれるって本当に仲のいい人にしか感じなかったから、この人たちでもいい人なんだなって素直に思えてしまった。

「ななかさん!これから仲良くしてもらえると嬉しいです!」

「は、はいっ!こちらこそ、よろしくお願いしますっ…!」

陸さんが片手をこちらに向かって出してきたので、そこに手を重ねて握手をする。

こんなにいい人も彼以外にいるんだなって思うと、なんだか嬉しかった。

本当はもっとおしゃべりがしたかったけれども、この後にアイドリッシュセブンの皆さんは自分たちの生配信があるらしく、帰っていった。

さっきまで賑やかだった楽屋は一気に静まり返ってしまい、湊川さんと二人っきりになった。

「ふぅ」

思わず出てしまったため息。でもこれは嫌な溜息じゃなくて久しぶりに体がはしゃいでしまって一息ついたっていう方が近い気がする。

「ななかにしては随分打ち解けるのが早かったわね」

「あはは、本当だね」

でもそのくらい、彼らの雰囲気はとてもよかったんだ。
だって初対面で、あんな醜態をさらしてしまったのに彼らはそれについては何も言わずにありのままの私として受け入れてくれた。

「あんなふうに初対面でも優しく接してもらえたのは久しぶりだったから」

自然と自分の口角が上がっていくのが分かる。

今では私もいろんな仕事をしてきたおかげで、この性格のことを知ってくれる人が多くなっているけれども、最初はいつも冷たい目で見られていた。

その度に湊川さんが庇ってくれていたけれど。
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