第1章 内気な子
あぁ、この匂いが好きだな。とても安心する。
自然と心が落ち着いて体の力も抜けてくる。もっと寄り添いたくなってたくましい胸に頭を押し当てる。
いつも抱きしめられている時はおとなしくしているか私も抱きしめ返すけれども、今みたいに自分で寄り添っていくのは滅多にしない。
それがわかっているので、たくましい体が少しぴくっって反応したのがわかった。けれどもそれも一瞬。
さっきよりも少し強い力で私は抱きしめられた。
どのくらいそのままでいたんだろう、少なくとも5分ほどは経っているんじゃないかな。どちらから離れるということもなく、顔だけを合わせる。
そのままゆっくりと龍之介さんの顔が近付いてきたかと思えば、唇に柔らかいものがあったった。
流れに身を任せるように私は目を閉じた。
何回もくっついては離れてを繰り返してその度に角度が変わる。
舌を入れられることはないけれども、何回もキスをされると流石に苦しくなってくる。
「ふぁっ…。りゅの、すけさ…」
流石に苦しくなってきたから、少しでも離れようと彼の胸を押してみるもビクともしない。
それどころかより一層力を込めて抱きしめられてしまった。
ここまでくっつこうとする龍之介さんも珍しい。
きっと3分ほどは経っていたと思う。
龍之介さんの唇が離れたのはそのくらいの時だった。
「んはっ、うぅ…」
離れた途端一気に恥ずかしさが襲ってきて、龍之介さんの胸の中に倒れ込んでそのまま彼をポカポカと叩く。
「あいたた。ご、ごめんね、久しぶりだったからブレーキが効かなくて」
「ううぅぅ…!」
言葉にする事ができなかったからそのまま叩くスピードだけ早めた。
けどそれもあっという間に龍之介さんに捕まってしまった。
「怒ってる?」
私の両腕をつかんので開かせると、そのまま顔を覗き込んできた。
琥珀色の綺麗な瞳がじっと私を見つめている、いつもその瞳に見つめられているかと思うと心臓がギュッとなる。
「怒ってはないですけど、恥ずかしいです」
こんなにかっこいい人が私の彼氏だなんて今でも信じられないのに、こういったことをするといつも本当に余裕がなくなってしまう。