第1章 内気な子
私が卵で包んでいる間洗い物をしてくれているので、私の顔が赤くなっていることは幸いにも気づかれなかった。
出来立てのオムライスを2人で囲む。
今日は我ながら綺麗に包むことができた気がするし、いい感じに半熟にもできて大満足。
一口運ぶだけでとろとろ食感に覆われて幸せな気分になる。
ふぅっとはなからおいしさが抜けていく感覚がなんともたまらなかった。
「美味しいね、オムライスも久しぶりに食べたよ」
「ほんとですか、おいしかったならよかったです」
一口が大きいのか、龍之介さんのオムライスはあっという間に無くなっていた。こういったところを見るとやっぱり男の人なんだなって思ったり…。
ご飯を食べ終わると、2人でソファの前に座りテレビを見る。
先日一緒にし事をしたアイドリッシュセブンの番組が目に留まり、チャンネルをそこで固定する。
トリガーとも仲がいいみたいで、龍之介さんは楽しそうに皆さんとのエピソードを話してくれる。
特に以前ユニットを組んだメッゾのお二人の話が尽きない。
四葉さんは大の王様プリン好き。逢坂さんは音楽大好きで、辛いもの好き。
好みが正反対の2人がコンビを組んでいるのに、あんなに綺麗に声が揃うんだからプロなんだな。
他のメンバーの人の話を聞いていると皆さんいい人みたいで、とても楽しそうにお話をしてくれていて私も嬉しくなる。
この間の時は私が緊張してしまってしっかりと話すことができなかったけれども、それでもいい人たちなんだろうということはわかっていた。
次に会った時はもうちょっと話せたらいいな。
「あ、ごめんね。俺ばっかり話しちゃって」
龍之介さんの声を聞くことも、アイドリッシュセブンの皆さんの話を聞くのも好きだったから黙って頷いていたけれども、どうやら龍之介さんにはネガティブな方向で伝わってしまっていたらしい。
「え、違います!私龍之介さんの声を聞くのが好きでそれで、頷くしかできなかったというか…」
そういった風に伝わってしまうとは思わなかったので慌てて手を振り否定の意を込める。
すると安心した表情をしてそのまま私は龍之介さんの腕の中に閉じ込められた。
ちょっと高めの体温と龍之介さん自身の優しい匂い、私の背中まで回された逞しい腕全てが私を包みこんでくれるのがわかった。