第1章 内気な子
あの日以来、お互い忙しくなってしまって明日の予定はおろか連絡すらもできていなかった。
外に出かけると龍之介さんは必ずといっていいほどファンの方にバレてしまうし、外でのデートは無し。
いつもどちらかの家でデートすることになっている。
「前回は龍之介さんの家だったし、今回は私の家でいいかな?」
仕事が終わり、家に戻って一通りのことを終わらせた。
とりあえず龍之介さんから連絡が来る気配がないので、ラビチャで明日は私の家でという旨を送って部屋を掃除する。
しばらくすると了解スタンプが送られてきていた。
「かわいい…」
スタンプの後にお昼ごろに向かうと来ていたので、私もスタンプを送り返しておいた。
次の日、よっぽど楽しみだったのか私の目覚めはとてもよかった。
普段は早起きが苦手で、朝から仕事じゃない日や休みの日は遅くに起きることが定石だった。
でも今日は違う、ウキウキする気持ちを抑えきれずに早く来ないかなと部屋の中を右往左往してしまうけれどもそんなことは言ってられない。
午前は雑誌の撮影があるので、早めに出なくちゃ。
パタパタと動き回っている間に。部屋の中でチャイムが広がる。
インターホンに出ると、湊川さんの顔がアップで映されていた。
「あ、湊川さん。おはようございます」
「おはよう、そろそろ出れる?」
「はい、すぐに降りますね!」
お気に入りのショルダー鞄をかけて、部屋から出る。
雑誌取材だけとなると荷物も少なく済むからとてもありがたい。
いつもは苦手な取材があっという間に終わってしまった。
湊川さんには分かりやすすぎると帰り道に言われてしまうほどだった。
でもそんなことも気にしないくらい私の心はうかれている。
この後に龍之介さんに会えるってわかっているだけで一日がキラキラしているから不思議。
家に帰ってもまだ龍之介さんが来るには時間がある。
さっきまであんなに時間が過ぎるのが早かったのに今はとても遅く感じてしまう。
せっかくだから今まで撮り溜めていたテレビを見るためにリモコンを手に取ってソファに座る。
龍之介さんが出ているドラマを見ることにした。
普段の龍之介さんとは違って、アイドルの龍之介さんはとてもワイルドなので大人なシーンがたくさんある。