第1章 内気な子
私たちの関係を知っているからこその反応ではあるものの、さすがに見られていると居心地が悪くなってしまう。
これ以上八乙女さんたちにも見られたくなくて、台本で顔を隠した。
「まぁ、僕たちの前だからって油断しないようにね。君たちの関係は僕たちと彼女のマネージャーしか知らないんだから」
私たちの関係がばれたら、超人気アイドルであるTRIGGERに傷をつけてしまうかもしれない。改めて私がお付き合いしている人はそういう人であることを認識する。
九条さんが言っていることはとても正しいし、私も皆さんの枷にはなりたくない。
改めて気を引き締めなくてはと、再度思う。
少し考えこんでいた私の頭に、いつの間には立っていいた龍之介さんの手がのっかってくる。
程よい筋肉質の手の重さと温かさに少し気が緩む。
「ごめんね、気を付けるよ」
「あの、私も。気を付けます」
するとそれまでこちらに顔を向けていた九条さんだけれども、顔を軽くそむけてしまった。
「別に、ファンを悲しませないために隠し通してくれていたらいいだけ」
「天はお前たちが心配なんだよ」
「そんなんじゃない!」
八乙女さんに勢いよく反応している。
いつも正論をぶつけてくる九条さん。
正論なので、間違っていることは言っていない分耳の痛いことが多々あった。そのせいで最初はとても苦手だったけれども、優しい人であることは今ではわかっている。
それでも、ちょっと怖いときもまだあるけれども。
「はい、ありがとうございます」
いい人に変わりがないことは私もよくわかっている。
私は龍之介さんの隣に立って、お礼を言った。
少しだけピリッとしていた私たちにの空気が軽くなってきたころだった。
「あら、あなたたちこんなところにいたのね」
そこには姉鷲さんと湊川さんがいた。
それぞれのマネージャーがそろっていることも、あまり見ない光景だった。
「ななかもまだここにいたのね」
龍之介さんはさりげなく九条さんたちの方に移動して、それぞれのマネージャーに向かい合う形になる。
「もう、探していたのよ。そろそろ取材だから戻りなさい」
「ななかも、次の仕事に行くわよ」
「はい、わかりました」
見ると龍之介さんたちも戻らなくちゃいけないみたいだし。