第1章 内気な子
女優という仕事は大好きだし、何も後悔なんてしていないけれども龍之介さんとの関わりは少ない。仕事も被ることなんてめったにないし、そもそも活動内容が違う。
「なんで龍之介さんは私と付き合てくれてるんだろう」
付き合う前に龍之介さんとドラマの競演が一回だけあった。同じ事務所ではあったけれども接点があったわけではなかったので、私は見事に人見知りを発動していた。それでも龍之介さんは根気よく私に話しかけてくれた。
最初はそれも少し苦痛だったけれども、話していくうちにだんだんと彼と話すのが楽しくなってきていた。
気が付けば龍之介さんを目で追いかけるようになっていたし、気が合っていた。そんな中でもドラマが終わればこの関係も終わってしまうんだろうなと思っていた時だった。
龍之介さんから告白を受けた。
最初は何が何だかわからなくてパニックになってしまっていた私を、その時も優しく抱きしめてくれた。
今思えばいい思い出だななんてのんきなことを思う。
そう思い出にふけっている間に、龍之介さんがカメラ目線でファンサービスしたところを抜かれていた。いい感じのセクシーさが出ていて、キュンとなってしまう。
だめだめ、これは龍之介さんであって龍之介さんではない…。
謎の暗示を自分にかけながら、嫉妬しそうになる心をおさめていく。
TRIGGERの出番が終わってしまえば、とりあえず私のテレビタイムも終わり。見ている間に食べきってしまったスープを洗い場においてお風呂に入る。
ゆっくりとお風呂に入りながらも、途中で仕事の連絡が入ってきたらいけないので念の為スマホを持ってきている。
そのついでに龍之介さんに番組を見た感想を送っておく。
まだ付き合って半年ほどではあるけれども、今まで大きなケンカなどもしていないので、それなりに良好な関係が築けていると思う。
お風呂から上がってスッキリした体に、スキンケアとボディクリームを塗ってケアを行う。
本音はこういったことはめんどくさくてやりたくないけれども、自分の顔が商品となってくると必然とその辺りの知識も身についていた。
疲れたし早く寝れる日は早く寝てしまおう方針なので、リラックスできるペーパーアロマを焚いてベッドのそばにあるダウンライトだけつけて部屋の電気は消す。