第1章 内気な子
「じゃあ、また明日ね。明日はお昼から事務所に来て、その頃には台本が届いているはずだから」
「わかりました。ありがとうございます」
「じゃあ、お疲れ様」
窓が閉まり、車が発進する。
テールランプが見えなくなるまで見送り、自分の部屋に戻る。
いますんでいるマンションはセキュリティ面がとてもしっかりしているところで、エントランスには警備員方が、部屋の扉もオートロック式と、とても厳重。
そのおかげで安心して住ませてもらっているんだけれども。
最初こことは違ってセキュリティがいイマイチなところに引っ越そうとしていると、湊川さんの雷が落ちてこのマンションを手配してくれた。
正直一人暮らしでどこに住めばいいのかもわからなかったからとても気が楽だった。
明かりだけついている誰もいないしんとした廊下。
部屋の鍵を開けて、中に入り部屋の電気をつける。
ひとり暮らしにはちょうどいい1DKの部屋は、私の好きなものに溢れている。
気分転換にちょうどいいアロマや、本、観葉植物。
暖かい部屋にしたかったので気を基調とした家具がメインで配置されている。羽織っていた薄めのコートをクローゼットに直しこむ。
朝開けっぱなしにしていたカーテンを閉じる、そのまま冷蔵庫の中をあさる。特にお腹もすいていないし、適当に冷蔵庫にある材料でスープでも作って食べることにする。
出来立てのスープを大きめの器によそって、ベッドとその前にあるローテーブルとの間に座った。
ひとりでご飯を食べるといつも静かで少し寂しいので、テレビをつける。
ぱっと移った画面にはTRIGGERとアイドリッシュセブンの出ている歌番組。
「あ、今日これあったんだった」
近くに置いてあったりも混んですぐに録画をする。
好きな人が出ているものはドラマでも番組でも一通り録画するようにしている。
抱かれたい男NO2という称号を持っている彼は、ドラマとなるとそういったセクシーなシーンや女の人とのシーンが多くなってしまうので嫉妬してしまうこともしばしば。
それでも、やっぱり見ていたいと思うのは仕方のないと思う。
スープをゆっくりと食しながらボーっとしていると、待ちに待った龍之介さんの出番。
TRIGGERが舞台に立つと、観客から一気に黄色い声援が聞こえてくる。その度になんだか彼を少し遠くに感じてしまう。
