第1章 内気な子
長男だしご兄弟が多いからっていうのもあるせいで元々そういった気質の人ではあるのだけれども。
それにしてもなところがあるのは確かだった。
「だからって最後のはズルい」
もう既に会いたくなってしまった。
次会えるのは一体いつになるんだろう。
火照る顔を抑えて、湊川さんがのところまで向かった。
「あら、随分と遅かったじゃない」
顔の熱が落ち着くまで待っていたら、かなりの時間が過ぎてしまっていた。ラビチャも入り、ようやく楽屋からでて車までやってきた。
「お待たせしてごめんなさい」
「いいわよ、どうせ十さんに会っていたんでしょう?」
見事に当てられた。
確信をもって言われてしまったけれども、肯定するのは恥ずかしかったので、私はシートベルトをしてそっと窓の外を見る。
夏になるにはまだちょっと早い季節。
人によっては半袖に上着で調整している人や、薄めの長袖一枚の人もいる。
でもこれから日焼けも気を使わないといけなくなるからめんどくさいな…。
「ほんっと、分かりやすいわね。まぁ、世間にバレなければ私は何も言わないわ」
そのままアクセルを踏み車が動き出す。
ちょうど帰宅ラッシュと重なる時間になってきていたので、車の交通量もそこそこ多い。
案の定、渋滞に捕まってしまった。
「しばらく動きそうにないわね、仕方ない」
ピッピッとカーナビを弄りだしたと思えば、車内にトリガーの曲が流れてくる。
「あれ、湊川さんトリガーさんの曲持っていましたっけ?
」
「それは勿論、あなたの彼氏様がいるグループだしね。これでも気を使ってあげてるのよ」
「えへへ、ありがとうございます」
さっきまで寂しくて、もう会いたくなってしまっていた心に曲が響いてくる。
大丈夫、私はまだやっていける。
局に合わせて自然とリズムをとり、鼻歌を歌う。
「そうだ、さっき話した次のドラマについてなんだけれどもね」
こっちに一切顔を向けずに、ウインカーを出して車線変更を試みながら進んでいく。