第6章 言ノ葉【沙明】
ウィンという音を鳴らして扉が開く。
革のソファにはドカリと大きく座る眼鏡をかけた青年の姿。
「ハッ、来る頃だと思ってたぜ」
名前は沙明。この船において私が最も苦手とする人物。
私が汎であるにも拘らず、平気で下半身直結発言をして口説いてくる。
やってしまいたくなるほどに苦手だ。
「ン?もう一人いんな。……ああ、ツバサか」
私の隣にいたツバサがビクッと体を跳ねさせる。
彼女は彼のことをどう思っているんだろうか……?
「んで?ツバサは何の用だよ」
「つ、付き添いで来ただけ……」
少し怯みながらもきちんと答える。視線を合わせないようにしているように見えるのは私の錯覚だろうか。
「沙明、何で会議に来なかったんだ」
「そりゃ行かねーだろ。下手に喋ってグノーシアに目ェつけられたら、消されちまうじゃん」
この台詞も、もう聞いた。何回目のループかは忘れたけれど。
「俺はさ、目立ちたくねェんだよ。アンダスタァン?」
これもだ。沙明の我儘には付き合ってられない。
早急にここから去るため、会議に出ないのなら死んでもらうと直球で言い放った。
「……オゥケィ、ここは降参しとくわ」
折れたようだ。話すか死ぬかの二択を迫ったのだからその返答でないと困る。
「んじゃ、明日は俺を守ってくれよ?」
「そんな約束はしていない」
「つれねーなァ。まあそんなとこもいいけどな」
もううんざりだ。沙明をおいて娯楽室からツバサを連れて出る。
「ふう、ツバサがいたおかげで彼を殺さずにすんだよ。ありがとう」
「どう、いたしまして……?」
さあ、今日はもう寝よう。
ツバサと別れて、自室に戻った。