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【グノーシア】【短編集】宇宙を漂う船の中で

第5章 猫談義【シピ】


グノーシアが、いなくなった。全員眠った。
「ツバサ、良かったな」
隣から声をかけられる。
声の主は愛しい彼。
「ううん……皆から信じて貰えたのは、シピのおかげだよ。貴方がいなかったら、私が凍らされてたと思う」
「俺はお前がグノーシアでも、信じてたかもな」
「え……?」
どうして。
目線で訴えると、続きを話してくれた。
「だって、一度信じるって決めたら何があっても信じるべきだろ。変に疑り深くなっちまったら、もう誰も信じれねーからな」
やっぱり、貴方は凄い。
私は周りの様子を気にして、心の奥深くまで信用することができない。
だから、シピのそういうところ、とても尊敬する。
「あと、個人的な理由になっちまうんだけどな……」
「……?」
個人的な理由……?
どちらかと言うと論理的に動いて見えるシピには意外だった。
「好きなヤツは、何が何でも信じたかったからな」
好きなヤツ。そうハッキリ言われた瞬間、顔に熱が集まるのがよく分かった。
どうして、そんなことここで言えるんだろう……
「グノーシアに襲われるのは確かに嫌だよ。でも、それ以上にお前がいなくなるのが嫌なんだ。」
そんな風に、思ってくれてたんだ。
……嬉しい。
人生で一番嬉しい。
「俺は猫になりてーけど、猫になったら、お前が俺を飼うっていうのも、いいかもな」
「飼うって言い方じゃなくって」
そんな言い方は嫌。
主従関係じゃないんだから、対等でいたい。
「一緒に暮らすって、言って欲しいな」
彼の目を見てそう伝える。
彼は少し固まったあと、
「そうだな、俺もその方がいい」
解けた表情で笑いながら、そう言った。
彼はいつか本当に猫になってしまうけれど、その時までは、二人で猫の話をするのも悪くないかもしれない。
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